2023年7月19日、第169回芥川・直木賞の選考会が都内で行われました。
受賞作品は、
芥川賞・・・市川沙央さん著「ハンチバック」
直木賞・・・垣根涼介さん著「極楽征夷大将軍」
永井紗耶子さん著「木挽町のあだ討ち」
にそれぞれ決定しました。
【第169回芥川賞】市川沙央『ハンチバック』に決定、デビュー作で受賞https://t.co/IyVKFu20Fz
— ライブドアニュース (@livedoornews) July 19, 2023
先天性の疾患により背骨が右肺を押しつぶす形で極度に湾曲した側弯症の主人公・井沢釈華の生活を描く。市川さんは今回、デビュー作で受賞となった。 pic.twitter.com/xMCNJaPWmf
そして、今回注目したのは、初候補で初受賞を飾った市川沙央さんという女性。
市川さんは、筋疾患先天性ミオパチーという難病を患っており、人工呼吸器や電動車いすを使用して日常生活を送っています。
今回は、芥川賞受賞の作家・市川沙央さんが患う筋疾患先天性ミオパチーとはどんな病気なのか、受賞作『ハンチバック』のあらすじについて調べてまとめました。
市川沙央の先天性ミオパチーはどんな病気?
市川沙央のプロフィール
「我に天祐あり、と感じています」 芥川賞の市川沙央さん会見 https://t.co/qJPtXBpcn0
— 産経ニュース (@Sankei_news) July 19, 2023
「芥川賞でも重度障害者の受賞は初でしょうが、どうしてそれが2023年にもなって初めてなのか。それをみんなに考えてもらいたい、と思っています」
名前:市川 沙央(いちかわ さおう)
性別:女性
生年月日:1979年(2023年7月時点で43歳)
出身地:神奈川県
学歴:早稲田大学(人間科学部)卒
神奈川県で生まれ育った市川さん。
幼少期に国指定の難病と診断され、中学2年生の春からは人工呼吸器が生活の必需品に。
20歳を過ぎたころには思うように外出することもままならなくなったと言います。
「自分には小説くらいしかやれることがない」と考え、そこから20年、SFやファンタジーなどエンターテインメント系の作品を中心に小説を書き続けました。
そして、今までエンタメ系の作品を書いてきたなかで、今回初めて挑戦した純文学作品である「ハンチバック」で見事芥川賞を受賞しました。
引用:NHK
普段はタブレットを使って執筆活動をしているそう
筋疾患先天性ミオパチーとは
市川沙央さんが患っている病気は「筋疾患先天性ミオパチー」と呼ばれる国指定の難病です。
どんな病気?
骨格筋の先天的な異常が原因で、全身の筋肉の力が弱くなってしまう病。
国内では1,000~3,000名ほどしか患者がいない希病で、国の指定難病に認定されています。
現在根本的に完治させる治療は見つかっていません。
併発する主な症状は、
・呼吸器障害
・背骨が曲がってしまう側弯症
・運動能力の遅れ
・発育発達の遅延
など筋力の低下に伴い、様々な合併症を引き起こします。
その多くは生まれてすぐに症状が露呈しますが、稀に大人になってから発症するケースも…
急激に悪化することはありませんが、徐々に症状が悪化していく進行性の病気でもあります。
こちらは同じ病を患う大橋那奈子さんという女性のインタビュー
乳児期から先天性ミオパチーを患い、10年以上教員として働くも「去年出来ていたことが今は出来ない」。
限られた力で新たなことを始めたいと現在はイラストレーターをされています。
市川沙央さんとは違ったフィールドでご活躍されている方ですが、先天性ミオパチーがどのような病なのか、よく理解できる内容になっています。
根本的な治療が見つかっていないため、「これ以上症状を悪化させない」ことが治療の目標となるのですね…
ハンチバックあらすじも
今回芥川賞を受賞した『ハンチバック』は、市川沙央さんが初めて綴った純文学の作品です。
純文学とは・・・読者の為のエンターテイメント性を追求したものではなく、作者の芸術意識に重きを置いて描かれる文学作品のこと。
「ハンチバック」作品詳細
6月26日 #朝日新聞 広告です。#市川沙央 さん『ハンチバック』発売!
— 文藝春秋プロモーション部 (@bunshun_senden) June 25, 2023
第169回 #芥川賞 候補作。
「私の身体は生きるために壊れてきた。」
SNS上で続々とあがる感想の声、ぜひお聴きください。
▼くわしくはこちらからhttps://t.co/SuyB1ZJ0Dh pic.twitter.com/b9cobfwxMD
作品名 | 「ハンチバック」 |
著者 | 市川 沙央(いちかわさおう) |
出版社 | 文藝春秋社 |
発売日 | 2023年1月14日 |
ページ数 | 96ページ |
作品のタイトルにもなっている「ハンチバック」とは、背骨が異様に湾曲して丸くなっている人のこと。
わかりやすくいうと、いわゆる「猫背」のことです。
この本のキャッチフレーズは、
「私の身体は生きるために壊れてきた。」
かなり衝撃的なワードセンスですね。
「ハンチバック」あらすじ
『ハンチバック』の主人公は、背骨が湾曲してしまう、重度の障害を持つ井沢釈華という大学生。
著者である市川さんとおなじ、先天性ミオパチーを患う女性が主人公になっています
普段は通信制の大学に通い、グループホームで生活する普通の学生。
密かな楽しみはSNSにひっそり投稿している官能小説を書くこと。
しかし、ある時ひょんなことから自分を担当することになった男性ヘルパーが、自分だけの秘密にしていたSNSについて話題に出してきたことから事態が大きく動き出す…
以下多少のネタバレも
『ハンチバック』市川沙央 #読了
— さくらなみき@司書資格取得 (@chikiki5296) July 15, 2023
前評判は聞いていたものの、衝撃的な作品だった。障害者の存在はないものにされ、健常者至上主義で成り立った世界への怒りと、生きるために壊れていく身体の苦しみに、ガツンと頭を殴られた。安易な感想を吐いてのうのうと生きることが許されない気がする。 pic.twitter.com/7LHskWTS7F
背骨が湾曲してしまう先天性ミオパチーを患う学生・井沢釈華。
私生活では人工呼吸器が欠かせない。
密かな楽しみとして官能小説を投稿し、自身のTwitterでその内容についても触れていた。
ひとりで日常生活を送ることが難しい釈華はヘルパーの手を借りて生活していたが、入浴介護だけは両親の配慮もあって同性のヘルパーが担当してくれていた。
しかし、ある時人員不足でどうしても女性のヘルパーがつけられず、本人了承の上で男性のヘルパー(田中)が担当することになる。
入浴介護が終わった後、突然秘密裏で運用していたTwitterの話題を出され、動揺する釈華。
以前、自身のTwitterに「子供を宿して秀絶するのが私の夢」などと綴っていた釈華。
ヘルパーの田中はその文言を見てとんでもない提案をしてきたのだった…
読んでみた感想
この作品では、重度の障害を持つ主人公の心情や、細かな生活動作のひとつひとつが丁寧に描かれています。
また、医療行為描写における主観は、市川さんの実体験に基づくものだそう。
実際に体験したことだからこそ、より鬼気迫るものや生(なま)の苦しさを感じる内容になっています。
なお、ラストはかなり衝撃的で、賞の講評者からも賛否が分かれる内容になっています。
一度目に読んだ時は、どう解釈したらよいのか正直混乱しました
ぜひご自身の手に取って、衝撃の結末を見届けてみてほしいです!
読者の感想
芥川賞受賞を受け、市川沙央さんの『ハンチバック』(文藝春秋)を昨夜読了。帯にある金原ひとみさんの「読後しばらく生きた心地がしなかった」というコメントがめちゃくちゃ腑に落ちた。
— Nobuko Yoshida (@Novpoecoco) July 19, 2023
ハンチバック、読みました。読み終わった後、打ちのめされてしばらく呆然としてしまった。容易に感想を言うことさえ許されないような鋭さ。しかし、今わたしは、小説そのものだけではなくて、この小説を生み出した作者のことを含めて思って言葉を選んでいるような気がする。
— のこ (@sznk_0) May 29, 2023
市川沙央『ハンチバック』を読んだ。どう感想を書いても間違う気がしてしまう。やばい作家が現れてしまった。衝撃。
— 遠藤光太 (@kotart90) May 3, 2023
選評も異常だった。
金原ひとみ
“「小説に取って食われるのでは」と初めての恐怖を抱くほどだった。”…
まとめ
今回は、芥川賞受賞の作家・市川沙央さんが患う筋疾患先天性ミオパチーとはどんな病気なのか、受賞作『ハンチバック』のあらすじについて調べてまとめました。
・市川沙央さんの病気は「筋疾患先天性ミオパチー」
・遺伝子異常が原因で、徐々に筋力が低下していく進行性の病
・「ハンチバック」は同病を患う女子学生が、男性ヘルパーとの間に抱える秘密の関係とその顛末を描いた作品
読者から「感想が出てこない」「言葉が出てこない」という感想が多く聞かれる理由が、一度読んだらよくわかる作品。
突然殴られた後に呆然とするような、余韻が長く続く作品だと感じました。
純文学の原点ここにあり、だと思います。
気になる方は、ぜひ手に取ってみてくださいね!